アルトサックスとテナーサックスは、ともにサックスファミリーの中で人気の高い楽器です。
しかしながら、この2つの楽器には音域や音色などの違いがあり、初心者はどちらを選ぶべきか迷うことも多いでしょう。
そこで今回は、アルトサックスとテナーサックスの共通点と違いについて、特に「運指の観点」から解説していきます。運指とは、楽器の指使いのことです。
どちらもサックスの運指法の基本は同じですが、実際に出る音が異なるため、注意が必要です。アルトとテナー、それぞれの特徴を理解して、上手く演奏するコツをつかみましょう。
低い音が主体の曲ならテナー、明るい高音域が欲しければアルトと、目的に合わせて使い分けることが大切です。
この記事のポイント
音域の違い
楽譜の表記方法の違い
それぞれの特徴と得意な用途
アルトサックスとテナーサックスの運指の違いを比較
アルトサックスとテナーサックスは、ともにサックスファミリーの一員として人気のある楽器です。しかしながら、この2つの楽器にはいくつかの違いがあります。特に運指の違いに注目して比較していきましょう。
アルトサックスの運指表はテナーサックスと同じ
アルトサックスとテナーサックスの音域の違い
テナーサックスは低い音域を担当
アルトサックスはテナーサックスより高い音域
アルトサックスとテナーサックスの楽譜の違い
アルトサックスの楽譜はE♭表記、テナーはB♭表記
PDFでダウンロードできるアルトサックスとテナーサックスの運指表
アルトサックスとテナーサックスの音の違いを理解する
ソプラノサックスの運指表もアルトやテナーと同じ
テナーサックスはアルトサックスよりも吹きやすい楽器
テナーサックスのほうが全体的に吹きやすい楽器であると言えます。
その理由は第一に、テナーサックスの方が管の長さが長いため、より低い音域を得意としていることです。低い音域ほど発音しやすく、初心者にも扱いやすい音域です。
第二に、テナーサックスはジャズを意識して作られた楽器であるため、ブルースやスウィングなどのジャズ系の音楽を演奏するのに適しています。ジャズでは即興ソロが要求されることが多く、吹きやすいテナーサックスはその点でも初心者に優しい楽器といえます。
第三に、テナーサックスの音色は深みがあり、耳に優しい音色です。クラシック音楽ではかなり主張的な音色を持つアルトサックスと比べると、テナーサックスのほうが聞き手にも演奏者にもストレスが少ない音色だと言えます。
アルトサックスの運指表はテナーサックスと同じ
アルトサックスとテナーサックスの運指表はまったく同じです。
つまり、アルトサックス用の楽譜を読むのと同じ運指でテナーサックスも吹くことができるのです。逆もまた然りです。
これはアルトサックスとテナーサックスがともに「移調楽器」であることが大きな理由です。移調楽器とは、楽譜に書かれた音と実際に鳴る音が異なる楽器のことです。
したがって、楽譜の音符は同じであっても、アルトサックスとテナーサックスでは実際の音程が異なります。しかし、運指表は両者で共通しているため、ある程度の訓練があれば楽譜だけ変えれば持ち替えて演奏できるのです。
テナーサックスの運指表を確認するとアルトサックスも吹ける
前述の通り、アルトサックスとテナーサックスの運指表は同一です。
このため、テナーサックスの運指表をしっかり確認して習得していれば、ある程度の訓練をすればアルトサックスも吹くことができるようになります。
逆に、アルトサックスの運指表をマスターしている人は、テナーサックスの運指表を見る必要はほとんどありません。アルトサックスの運指の知識がそのままテナーサックスでも応用できるからです。
両方の楽器を演奏したい人は、まずどちらか一方の運指をしっかり身につけておくことをおすすめします。そうすればもう一方の楽器もスムーズに演奏できるようになるはずです。
アルトサックスとテナーサックスの音域の違い
アルトサックスとテナーサックスの大きな違いの一つが、それぞれの楽器の音域の違いです。
テナーサックスの方が楽器自体のサイズが一回り大きいため、テナーサックスのほうが低い音域を得意としています。逆に、アルトサックスの方が高い音域を得意としていると言えます。
例えば、同じドの音を奏でる場合、アルトサックスでは約ピアノのミbあたりの音程ですが、テナーサックスでは約ピアノのシbあたりの1オクターブ低い音程となります。
このため、低い音域を活かしたいジャズなどを演奏したい場合はテナーサックスを、高い音域のソロパートを担当したい場合はアルトサックスを選ぶといいでしょう。
テナーサックスは低い音域を担当
前述の通り、テナーサックスはアルトサックスと比較すると低い音域を得意とする楽器です。
テナーサックスの低い重厚な音色は、スウィングジャズやブルースでよく聞かれる音色です。打楽器ともよく合う陰影のある音色で、リズムセクションの一員として欠かせない楽器といえます。
また、テナーサックスは管楽アンサンブルにおいても低音パートを担当することが多く、男性的な音色でアンサンブルの土台を支えます。アルトサックスの明るい音色とテナーサックスの重厚な音色のコントラストがアンサンブルの魅力を高めています。
アルトサックスはテナーサックスより高い音域
一方、アルトサックスはテナーサックスと比べると高い音域を得意とする楽器です。
アルトサックスは打楽器とのバランスもよく、明るい音色でメロディを奏でるのに向いています。特にソロのパートを任されることが多く、華やかな音色で聴衆を魅了します。
また、アルトサックスはクラシック音楽でも重要な役割を果たしています。オーケストラ編成にはアルトサックスは含まれませんが、管弦楽団では欠かせない楽器として重宝されています。
クラシックからポップスまで幅広いジャンルで活躍するアルトサックスの高い音域の存在は大きいと言えます。
アルトサックスとテナーサックスの楽譜の違い
アルトサックスの楽譜は主にEb記号で表記されます。これはアルトサックスがEb調の移調楽器であるためです。
一方、テナーサックスの楽譜は主にBb記号で表記されます。テナーサックスはBb調の移調楽器だからです。
つまり、アルトサックスの楽譜にCと書いてある音は、実際にはピアノのEbの音に相当します。同様に、テナーサックスの楽譜のCは、実際にはピアノのBbの音になります。
これらの略号は、キー記号と呼ばれています。楽器の性質上、記譜する際にこのような表記方法を使うことで、演奏者にとって扱いやすい楽譜になっています。
また、アルトとテナーでキー記号が異なるため、ある楽曲を両者で演奏する場合は楽譜を書き換える必要があります。これを「移調」と呼び、半音単位で音程をずらしていく作業になります。
要するに、見た目は同じ楽譜でも、アルトサックスとテナーサックスでは実際の音程が異なります。楽器の違いを理解した上で、正しい楽譜を用いる必要があるのです。
アルトサックスの楽譜はE♭表記、テナーはB♭表記
前述の通り、アルトサックスの楽譜は主にE♭記号で表記され、テナーサックスの楽譜は主にB♭記号で表記されます。
これらの違いは、それぞれの楽器の基本音が異なるためです。アルトサックスの基本音はE♭で、テナーサックスはB♭です。
したがって、同じドの音を奏でる場合、アルトサックスの楽譜ではE♭の音に相当しますが、テナーサックスではB♭の音に相当します。
楽譜上では同じ位置にドの音が書かれていても、実際には異なる音程が奏でられていることになります。これがアルトとテナーの楽譜の違いです。
このため、アルト用の楽譜をそのままテナーで演奏すると、全音程がずれてしまい正しく演奏できません。楽器に合った楽譜を用意する必要があります。
PDFでダウンロードできるアルトサックスとテナーサックスの運指表
インターネット上には、PDF形式でダウンロードできるアルトサックスとテナーサックスの運指表が多数公開されています。
運指表のPDFをプリントアウトすることで、演奏の際にすぐに確認できるので便利です。スマートフォンやタブレットにも保存しておけば、いつでもどこでも手軽に運指を確認できます。
無料で利用できる運指表もありますが、わかりにくい図版のものもあるので、自分の演奏スタイルに合った表を選ぶことをオススメします。
有料の運指表アプリなども存在しており、動画や解説付きのアプリであれば、運指の理解が深まり習得も早まるでしょう。
アルトサックスとテナーサックスの音の違いを理解する
アルトサックスとテナーサックスでは、同じ運指でも実際に出る音が異なります。これは両者の管の長さが異なるためです。
テナーサックスのほうが管が長く、アルトサックスよりも1オクターブほど低い音域となります。吹きやすさにも影響し、テナーのほうが低音中心の曲であれば扱いやすくなります。
一方、アルトサックスは高音域を得意とし、通常の楽譜の音程との差が少ないため、他の楽器との合奏がしやすくなります。
このように、管の長さの違いが各楽器の音域と音色の違いを生み出していることを知ることで、アルトとテナーそれぞれの特徴を理解することができます。
ソプラノサックスの運指表もアルトやテナーと同じ
サックスファミリーの中でもソプラノサックスは、アルトやテナーより一回り小さなサイズの楽器です。
しかしながら、ソプラノサックスの運指表もまったく同じように、アルトやテナーの運指表と共通しています。
これはサックス全般が同じ「移調楽器」として設計されているためです。運指に関しては、楽器の大きさに関係なく標準化されているのです。
したがって、アルトやテナーの運指が分かっていれば、ソプラノも同様に吹くことができます。一度習得した運指なら楽器が変わっても応用が利き、大変便利な仕組みがサックスには備わっていると言えます。
アルトサックスかテナーサックスか迷ったらこの点をチェック
アルトとテナー、サックス初心者が最初に直面する選択肢です。それぞれの特徴を理解した上で、自分に合った楽器を選ぶことが大切です。
テナーサックスはジャズを意識したい人におすすめ
アルトサックスならクラシックからポピュラー幅広く演奏できる
テナーサックスの低い音域が魅力的な人にオススメ
アルトサックスとテナーサックス両方吹きたいならセッティングを合わせる
運指さえ覚えれば2つの楽器が簡単に演奏できるメリット
まとめ:アルトサックスとテナーサックスの運指の違いとは?
初心者はアルトサックスの方がおすすめ
はじめてサックスを習うのであれば、アルトサックスを先に勧めます。
アルトはテナーよりも小型で持ち運びに便利、高い音域は発音しやすく初心者に優しいのが特徴です。ジャンル的にもクラシックからジャズ、ロックと幅広く使われている定番の楽器といえます。
上達したら低音も魅力的なテナーに移行するという選択肢もありますが、サックスの基本を学ぶにはアルトから始めるのが無難な選択だと言えるでしょう。
テナーサックスはジャズを意識したい人におすすめ
一方で、ジャズやブルースなどの黒人音楽を弾きたいと意識している場合は、テナーサックスを選ぶのもアリです。
テナーの深みのある音色は、アルトにはない魅力があります。即興ソロもテナーの低音が活きるジャンルでは、アルトよりもテナーのほうが自然な演奏感が得られるでしょう。
ジャズやブルースでのソウルフルな芸風を目指すなら、テナーは向いていると言えます。ただし、やはり基本技術はアルトのほうが習得しやすいことに留意しましょう。
アルトサックスならクラシックからポピュラー幅広く演奏できる
アルトサックスの大きな魅力は、クラシックからポップスまで実に幅広いジャンルで活躍できることです。
管弦楽ではアルトサックスは不可欠の楽器で、クラシックのソリストとしても活躍しています。一方、ジャズやロックではテナーほどは重宝されていないものの、キメの細かいソロには欠かせない存在です。
クラシック寄りからポップス、ロックまで幅広いレパートリーを持ちたい場合は、アルトサックスをオススメします。発声のしやすさも手伝って、様々な音楽ジャンルを吹きこなせる技術が身につきます。
テナーサックスの低い音域が魅力的な人にオススメ
一方、テナーサックスの低くソウルフルな音色に魅了される人も多いでしょう。
テナーならではの重厚な低音はアルトにはない武器となり、ブルースやロックでは幅を利かせます。逆に高音域はアルトほど華やかさがないため、テナーの個性的な低音を楽しみたいという気持ちが大切です。
ジャズはもちろん、バラード調のロックや前衛的なフュージョンなど、テナーの低音が活きるジャンルなら、アルト以上に表現力が広がるはずです。
アルトサックスとテナーサックス両方吹きたいならセッティングを合わせる
アルトとテナー両方の魅力に惹かれ、どちらも上手く吹きたいと思う人は少なくありません。
その場合、二本の楽器のセッティングをある程度統一した方が、持ち替えが楽になります。
特にマウスピースとリードの硬さは極端な開きがあると、一方の楽器が吹きづらく感じられます。リード1枚で両方の楽器を吹くというコツもあるので、リード選びは両者で共通に使えるものを選ぶとスムーズでしょう。
運指さえ覚えれば2つの楽器が簡単に演奏できるメリット
結論として、アルトとテナーは運指が全く同一なので、一方の運指を習得すればある程度他方も吹けるようになります。
特にジャズなどの即興ソロでは、思いついたメロディをすぐにどちらの楽器でも吹けるのは大きなメリットです。
アルトとテナー両方の長所を熟知し、状況に応じて持ち替えられる柔軟性は、サックス奏者にとって強力な武器になると言えるでしょう。
まとめ:アルトサックスとテナーサックスの運指の違いとは?
アルトサックスとテナーサックスの運指の違いについてのポイントは以下の通りです。
アルトとテナーの運指表はまったく同じである
テナーはアルトよりも管が長く、低い音域を得意としている
アルトはテナーよりも高い音域を得意としている
アルトの楽譜はE♭表記、テナーはB♭表記である
PDFでダウンロードできる運指表が便利である
音の高低は管の長さの違いで生じている
ソプラノサックスの運指表も同じである
初心者はアルトから、ジャズ向きはテナーから始めるといい
アルトは様々なジャンルで活躍できる
テナーは低い音域が魅力的である
両方吹きたいならセッティングを合わせるといい
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