「焼きたてジャぱん」は、2001年から2007年まで週刊少年サンデーで連載された人気漫画です。
主人公の東和馬は、パンの魅力に魅せられたあまり、プロのパン職人を目指す少年として描かれています。 作中では、富士山型の無発酵ナン(ジャぱん16号)や324層ものバケモノミルフィーユクロワッサン(ジャぱん43号)、メロン寿司パン(ジャぱん58号)など、実に様々なパンが登場します。 それと同時に、パン作りに関する専門用語や知識も丁寧に解説されており、読者もパンの奥深さを感じることができるのです。
連載終了後も、アニメ化やゲーム化、実在するパン屋とのコラボ商品の発売など、その人気は衰えることなく続きました。 中でもアニメ版は2004年10月から2006年9月まで、テレビ東京系列で放送。全69話が放映されました。 ゲーム版は2005年にゲームボーイアドバンス用ソフト「焼きたて!!ジャぱん~僕のパン屋さん~」としてリリースされ、パン作りシミュレーションが楽しめる内容でした。
しかし、そんな人気作の最終回は衝撃の展開を迎えます。 物語のクライマックスにて、なんと格闘ゲーム「ストリートファイターII」でお馴染みのキャラクター、ダルシムが登場。 最終コマは彼の放った一言「なんやて!?」で幕を閉じるのです。
この唐突な展開に、多くの読者が困惑したことでしょう。 一体なぜ、パン職人を目指す少年の物語に、ダルシムが関わってくるのか。 その真相は、最終章の内容に隠されていました。
この記事のポイント
・「焼きたてジャぱん」最終回の意外な展開
・最終回で主人公が取り組んだ「地球温暖化を解決する真のジャぱん」作り
・ライバルキャラクターの河内恭介がダルシムに変身した理由
・人気漫画の最終回が賛否両論を巻き起こした経緯
週刊少年サンデー連載「焼きたてジャぱん」の最終回とは
「地球温暖化を解決する真のジャぱん」作りに挑戦
物語の最終章にて、主人公の東和馬はある壁にぶつかります。 それは「パン作りによって発生する二酸化炭素が、地球温暖化を促進している」という事実でした。
パンは発酵の過程で二酸化炭素を発生させます。 その二酸化炭素が大気中に放出されることで、温室効果ガスの一つとして地球温暖化に影響を及ぼしているのです。 地球温暖化が進行すれば、海水面が上昇し、島々が水没してしまう。 つまり、パンを作ることは、人々を悲しませる行為となってしまうのです。
この事実を知った東和馬は、「地球温暖化を解決するパンこそが、真のジャぱんだ」と考えます。 作中では「ジャぱん」という言葉が、日本を代表するパンを指す単語として使われていました。 その定義を「地球規模の問題解決に貢献するパン」にまで昇華させたのです。
この発想の転換は、連載当初から「理想のパン=ジャぱん」を追い求めてきた主人公らしい展開と言えるでしょう。 7年間に渡って描かれてきた東和馬の成長が、ここに集約されているようにも感じられます。 環境問題という社会的テーマを物語に盛り込んだことで、少年漫画の枠を超えた、より普遍的なメッセージ性を獲得したとも評価できるかもしれません。
そして東和馬が完成させたのが「とろろパン」です。 とろろを使ったパンというのは、一般的にはあまり聞き慣れない組み合わせかもしれません。 しかしこのとろろパンが、一体どのように地球温暖化解決に貢献するのか、その詳細は明かされていません。 読者の想像力を掻き立てる、意表を突いた選択と言えるでしょう。
河内恭介がとろろパンを食べるとダルシムに変身
完成したとろろパンを食べたのは、東和馬のライバルでもある関西のパン職人、河内恭介でした。 作中では味に厳しい河内恭介が登場する度に、リアクション芸とも呼べる印象的な場面が描かれてきました。 料理漫画でよく見られる、料理の味を表現する手法の一つと言えるでしょう。
ところがとろろパンを食べた河内恭介は、なぜかダルシムに変身してしまいます。 作中でも「河内がダルシムになった」とはっきり描写されているため、比喩表現ではなく物語の事実と捉えるべきでしょう。 一般的な料理漫画の文法から逸脱した展開に、読者は大いに混乱したことでしょう。
ちなみにダルシムとは、格闘ゲーム「ストリートファイターII」シリーズに登場するキャラクターです。 インド出身のヨガ行者で、超能力のようなヨガの技を繰り出すことで知られています。 「焼きたてジャぱん」の作者である橋口たかしは、本作の連載開始以前に「ストリートファイターII 4コマ漫画劇場」を手がけており、格ゲーキャラへの造詣が深いことがうかがえます。 最終回のダルシム登場は、そうした作者の個人的な嗜好が反映された結果なのかもしれません。
ダルシムになった河内恭介の超能力で海から陸を浮かせ「焼きたてジャぱん」最終回は幕
物語はさらなる驚きの展開を見せます。 ダルシムと化した河内恭介が、超能力で海から陸地を浮かせてしまったのです。
これで仮に地球温暖化の影響で海面が上昇しても、島が水没する心配はない。 このように考えれば、東和馬のとろろパンには、地球温暖化問題を解決する何らかの効果があったのだと推測できます。
しかしながら、大陸が浮くようなファンタジー展開に、読者からは「げっこく」「意味不明」といった声も上がりました。 パン作りに情熱を注ぐ少年の成長物語が、突如として非現実的な方向へ舵を切ったことに戸惑いを感じた人も多かったようです。
また、最終コマで描かれた「なんやて!?」という台詞は、7年間作品を追いかけてきた読者の心情を代弁しているかのようでした。 この唐突な結末に、「これで終わりなのか」と茫然自失となったファンも少なくなかったことでしょう。 一方で、この台詞をダルシム役の水島裕が演じたアニメ版の名シーンを彷彿とさせる、一種のオマージュだと捉える向きもあります。
最終回はシュールなギャグ展開に、パン作り漫画からかけ離れた内容に
結局のところ、「焼きたてジャぱん」最終回は、シュールなギャグ展開によって締めくくられました。 7年間続いたパン作り漫画が、最後の最後で趣旨から大きくかけ離れてしまったのです。
主人公の東和馬が理想のパン「ジャぱん」を追求する物語は、環境問題への問題提起から一転、ファンタジーとコメディが入り混じった奇想天外な内容へと変貌を遂げました。 このギャップに、多くの読者が困惑したのは想像に難くありません。
連載中は、パンに関する専門的な知識を丁寧に解説してきた本作。 最終回でそれらが全く活かされなかったことに、物足りなさを感じたファンもいたかもしれません。 「地球温暖化を解決するジャぱん」という壮大なテーマも、実のところ中途半端な扱いに終わってしまった印象です。
ギャグ漫画的な要素は、「焼きたてジャぱん」の随所に散りばめられていました。 主人公の頭に巻かれたタオルがいつの間にかターバンになっていたり、週刊少年サンデー編集部をネタにした小ネタが登場したりと、シリアスな展開の合間に笑いの要素が挿入される構成は、連載当初から変わっていません。 しかし、そうした笑いもラストシーンに至っては、あまりに常軌を逸していました。 一体なぜ、パン職人を目指す物語がここまで暴走したのか。 その真意は作者のみぞ知るといったところでしょう。
人気作品だった「焼きたてジャぱん」だが最終回は賛否両論に
「焼きたてジャぱん」は、連載期間中多くの支持を集めた人気作品でした。 2005年には第49回小学館漫画賞少年向け部門を受賞するなど、その人気ぶりは漫画業界でも高く評価されていました。
2007年3月に連載が終了した際には、大手書店チェーンのジュンク堂書店池袋本店で「焼きたて!!ジャぱん展」が開催されるなど、ファンへの感謝を込めたイベントも行われていました。 こうした事実からも、本作への愛着や期待の大きさがうかがい知れます。
しかし最終回の衝撃的な展開に、読者の反応は真っ二つに分かれることとなりました。 7年間積み重ねてきた物語を無下にするような結末に、失望と怒りの声を上げるファンが続出。 「買って損した」「もっとまともな終わり方があったはず」など、厳しい意見が多数を占めました。
その一方で、最後まで作者の意表を突く展開を楽しんだという声も一定数存在します。 あまりに突拍子もないオチゆえに、かえって強烈なインパクトを残したと好意的に受け止める向きもあったのです。 また、一般的な少年漫画の枠組みを超えた結末に、「革新性がある」と評価する意見も見られました。
ともあれ、「焼きたてジャぱん」の最終回が物議を醸したことは紛れもない事実です。 連載完結から15年以上経った今なお、当時の衝撃が色褪せることはありません。 本作の見せた奇想天外な結末は、漫画史に残る一大事件として語り継がれていくことでしょう。
まとめ:焼きたてジャぱんの最終回
・「焼きたてジャぱん」は2001年から2007年まで週刊少年サンデーで連載された人気漫画
・主人公の東和馬はパンの魅力に魅せられ、プロのパン職人を目指す少年として描かれる
・作中では様々なパンが登場し、パン作りに関する専門用語や知識も丁寧に解説される
・連載終了後もアニメ化やゲーム化、実在するパン屋とのコラボ商品の発売などで人気が続いた
・最終回では主人公が「地球温暖化を解決する真のジャぱん」作りに挑戦する
・完成した「とろろパン」を食べたライバルの河内恭介が格闘ゲームのキャラクター、ダルシムに変身
・ダルシムになった河内恭介が超能力で海から陸地を浮かせ、地球温暖化問題に対処する
・最終回はシュールなギャグ展開に、パン作り漫画からかけ離れた内容になった
・連載中に受賞歴もある人気作品だったが、最終回での展開には賛否両論があった
・奇想天外な結末は漫画史に残る出来事として、今なお語り継がれている
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コメント
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